③隔離ホテル到着後
バスを降ろされたのは、「吉泰精品酒店」というホテルの前でした。スーツケースが先に降ろされており、水滴がつくほど消毒液をかけられます。防水が甘いバッグは中の物をあらかじめビニールに入れておくことをお勧めします。人間も例外ではなく、一人ずつ防護服のスタッフに消毒液を浴びせられます。「目を閉じて!」、シャーッ、「後ろ向いて!」、シャーッ、という感じです。子供は辛いかもしれません。
やっと建物に入れてもらうと、簡素な机で注意事項と部屋番号を書いた紙を渡され、10人ずつぐらいまとめて説明を受けます。防護服のスタッフもお疲れ気味で「オレはもう疲れた。頼むからもっと近づいて聞いてくれー」などと言っています。顔は見えませんが、中身は天津の気のいい兄ちゃんのようです。ちなみにこのホテルは夫婦も一人一室で、同室OKは小さい子のみとのこと。試しに「えー」とゴネてみると、周りの人が「新婚なのよ〜(大嘘)」と援護射撃をしてくれました。この辺が天津ですね。お兄さんの説明は早口の中国語でよくわかりませんが、「部屋から一歩も出ちゃダメ、1日3食支給、通販も出前も好きに呼んでよし、でも届ける時間は限られるからね。酒はダメ、タバコもダメ、だけどオレには見えない(笑)」みたいな感じでした。
おとなしく個室を受け入れ、エレベータにぎっしり乗ってそれぞれの部屋に向かいます。どうやらホテル自体がまだ内装工事中で、できた部屋から入れているようです。1フロア30室ぐらいあるでしょうか。埃っぽい廊下を延々歩いてたどり着きました。新しいし、想像よりずっとまともなホテルだわ……と思ったとたん、冷たい風が顔に当たります。窓を閉めようとすると閉まらない。さっそく防護服のお兄さんを呼び、部屋を変える羽目になりました。
#その後、「お湯が出ない」「暖房が効かない」などの不具合で部屋を変わる人が結構見受けられました。割と柔軟に対応するようです。
防護服が「みなさん、部屋に入ったね?お疲れさま!先ずはシャワーを浴びてゆっくりしてね。もう少ししたら夕飯を配りま〜す」と大声で言いながら去って行きました。入口で渡された紙に階ごとのグループチャットのQRコードがあるので、さっそくフォローします。今後のやり取りは全て微信です。支払い用のQRコードもあり、「部屋に入ったらすぐに費用を払って、支払い完了画面のスクリーンショットをグループチャットに送るように」と指示されました(が、誰も特に急いで払っている様子はありません)
さて、部屋に入ると消毒液の後なのか内装工事の粉塵なのか、やたら埃っぽい。拭けるところは水拭きし、荷物を解いているとドアをノックする音が。開けると誰もおらず、小さな台の上に夕飯らしきものが置いてありました。なるほど、こういう方式ね。
こうして、14日間の隔離生活が始まりました。