コラム

【広東・上海版】08.あえて新陳代謝を促す…解雇をためらうのは傲慢?

2023年04月25日
人事労務は海外経営の基礎

前回、社員から辞めたいと申し出があった際、正直ほっとしたら、その社員はいま辞めてもらうべき対象者だという話をしました。でも、「やっぱりそうか、分かった」とすぐアクションを取る日本人経営者は見たことがありません。それどころか、解雇しなければ他の社員に不公平だという問題言動を重ねた相手でさえ、日本人経営者は解雇をためらいます。

解雇をためらう理由は大きく二つ(自覚しているかどうかは別にして)。一つは「紛争や裁判沙汰になるのはイヤだ」という厄介事から逃げたい心理。対応が面倒だし、サラリーマン経営者なら本社や上司からネガティブに捉えられるのも避けたい。もう一つは「家族(社員)を切り捨てたら、彼らはどうなるんだ」という相手の今後を懸念する気持ち。路頭に迷うことはないだろうけれど、生活に困窮しないだろうか。自分たちを恨まないだろうか。家族を切り捨てたような自分の非情さに対する後ろめたさも混じります。

しかし、私はそんな経営者に「解雇をためらうのは、もしかすると自分の傲慢であり、相手にも失礼では」と突っ込みます。解雇をためらう気持ちの半分は「我が身可愛さ」。イヤな対応はしたくないし、後味が悪いのもイヤ。そしてもう半分は「ここを辞めたら、本人はいまより不幸になるはず(もっと条件の悪い仕事しかない)」という無意識の決めつけ。

これは失礼な話。本人は他社へ行ったり自分で起業したりしたら、水を得た魚のように活躍するかもしれない。自分たちは本人の持ち味を活かせず、潜在力を引き出せなかっただけかもしれない。辞めさせたら可哀想というのは、実は上から目線の発想です。

目先の業績優先で功労者や地道な貢献者を安易にリストラするのは愚かなことですが、本当は辞めてもらった方がいい人まで、可哀想だからとか自分の手を汚したくないという理由で解雇を避けるのは、一種の傲慢であり自己中心と言えるかもしれません。

2021.12 Whenever広東、Whenever上海誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。