コラム

【広東・上海版】05.”いい人が採れない”時代の採用戦略…松

2022年07月12日
人事労務は海外経営の基礎

中国で常態化している「いい人が採れない」事態。今回は、ほとんどの日系企業に勧めたい対応策です。ほとんどと前置きしたのは、研究・クリエイティブなど突き抜けた個の力が業績を左右する組織では、梅=ハイスペック人材獲得の激戦に突っ込むことも必要だから。それ以外の組織では、今回の「人の行く裏に道あり花の山作戦」で行きましょう。

この言葉は株や投資の格言。人が買う高値のときに自分も買い、人の売る安値のときに自分も売るような付和雷同では儲けられない。むしろ孤独や不安に負けず、自らの判断・意思で人と異なる動きをしなければ成功できないと諭したものです。

これを、野球の世界で実践してMLBの常識を変えたのがオークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGM。彼の考え方や見事な成果を積み重ねていく過程は「マネー・ボール」という書籍で描かれており、一読の価値があります(映画にもなりました)。

ビリー・ビーンがGMに就いた時代、MLBは球団毎の財力格差が広がり財力=強さの構図が固定化。財力がなければ有力選手を採れず、育てても金満球団に引き抜かれる。そんなMLBでも随一の貧乏球団だったアスレチックスで、彼はセイバーメトリクス(統計データによる分析手法)を徹底活用し、独自の要素・指標で選手を獲得・入れ替えしていきました。

それまでのセオリーや価値観に反するような戦略を進めた結果、リーグ最低クラスの年俸総額でありながら好成績を積み上げていきました。2002年にはトップチームの1/3程度の年俸総額で全球団最高勝率・最多勝利数を記録し、懐疑的・批判的だった他球団にも大きな影響を与えました。

私は、これからの中国における人材採用でも、同じ発想が必要だと考えています。弊社自身、従来用いていた「鶏口人材を狙え作戦」を「裏に道あり作戦」に進化させて用いるようになりました。

2021.09 Whenever広東、Whenever上海誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。