コラム

特別編…最前線で奮闘する皆さんへ

2020年03月31日
日本流が通用しない時代の組織経営

二月号のコラム原稿を書いたのが春節前の一月中旬。それからこのコラムを書くまでの一か月で、世界がここまで変わってしまうとは、想像できませんでした。こんなに早くこうやって皆さんに届けられるようになっただけでも、大きな前進だと思います。編集部の皆さん、大変な状況のなか、お疲れさまでした。

これを手に取っていただいた皆さんも、きっと現地にいらっしゃるでしょうから、さまざまなプレッシャーやストレスのかかる現地最前線で、要務お疲れさまです。感染抑止・客先対応・サプライヤーや業者の確保・人手の確保など、課題山積だと思いますが、混乱が拡大する日本よりはトンネルの先の明かりが見えてきました。身体には気をつけてお過ごしください。

この場で、新型肺炎のことに関して私が実務的なことを書いても、ほとんど意味がないと思います。状況は時々刻々と変化していきますから、事態に直面している皆さんのお役に立つことはできません。ここでは、ちょっと逆のことを書きたいと思います。

それは「情報デトックスの勧め」です。私自身もですが、春節休暇に入ったころから膨大な情報収集が始まりました。各地の感染拡大状況。矢継ぎ早に出される当局からの通知や発表。武漢の深刻さを伝える各種のニュース。非常事態における企業への特殊対応の指示や要請。邦人に関わる情報。企業再開に向けた公式・非公式情報の数々……。ほとんどは、ポジティブなトーンではなかったはずです。不安・懸念・憂慮・焦燥などを伴う膨大な量の情報が流れ込んできました。

緊急事態で、こちらも気を張っていますし、注視もしているので、片っ端から目を通してきましたが、大量の負の情報を受け止めることで消費された「心のエネルギー」は、相当大量なはず。いずれガス欠が起きてもおかしくありません。特に、操業が再開でき、だいぶ落ち着いて気の張りが解けた頃が危険。突然、反動で落ち込んだり、無気力になったり、身体を壊したりしそうです。

これを避けるため、そろそろ膨大な情報を読み込んだり受け止めたりすることを止めて、心のエネルギーを回復しませんか、というのが情報デトックス(解毒)のお勧めです。部下に任せられるところは任せてしまう。自分が読まなくてもいい内容は読まない、読み流す。まだ、人が集まるようなイベントや外に出かけることはできませんが、読書・映画・音楽・ゲーム・お笑いを見るなど、あえて日常的な息抜きの機会をつくる。自分にリラックスすることを許す。気持ちが高まることをやる。

そうそう、筋トレには抗うつ効果や気持ちをポジティブにする効果もあるそうです。器具なんてなくても自重(自分の体重を使った)筋トレで十分ですし、5〜15分ぐらいの短時間で、週に二回程度でもいいので、お試しを。私は整体師さんにメニューを組んでもらって、三日間で二日、10分ぐらいで終わる筋トレを昨年から続けていますが、本当に風邪を引かなくなりました。

まずは、膨大な情報に接することからいったん離れる。非常時対応モードを続けてきた自分の心をほぐす。リラックスしたり楽しんだりすることを許し、積極的に取り入れる。がくんと来る前に、自分で緩めたり充電したりしましょう。これから、中国と日本を自由に行き来したり、気軽に外食や宴会を楽しんだりできるようになるまでには、まだ長い期間がかかると思います。マラソンもサッカーも最初から最後まで全力疾走なんてできませんので、締めたり緩めたりして進んでいきましょう。

 

これを書いている二月下旬時点で、むしろ心配なのは日本の状況。中国の多くの地域とは、事態が「交差」しつつあります。本社側は特殊事態で余裕がなくなるでしょうし、認識ギャップも生じるでしょうが、すでに修羅場をくぐった現地の皆さんがリードして、乗り越えていただければと思います。

2020.03 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。