コラム

指示待ち部下と指示無視部下、どっちを選ぶ?

2025年03月07日
中国駐在…変化への適応さもなくば健全な撤退

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部下が主体性のない「指示待ち」では困る。かといって上司や先輩に従わず我が道をゆく「指示無視」でも困る。結局、どっちがいいのか。これは悩ましい問題です。何を優先するかで結論も変わるでしょう。

部下を伸ばせるリーダーになるためには、まずそれぞれの行動を理解する必要があります。こうした部下の特性を知り、チームに最大限に活かす方法について、私なりに考えてみたいと思います。

毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
小島のnoteをこちらに転載しています。

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どっちも正直つらい

今回のテーマは、自分でも「わざわざ選ばなくてもいいのに」と思うほどの難問でした…。

正直に言うと、どっちもつらい。自分の部下にするならと考えると厳しい選択ですが、どのような思考でどういった結論に至ったのか、お話ししたいと思います。

「指示待ち」部下のメリット・デメリット

指示待ち部下のつらい点は、いちいち指示を受けなければ動けず、常に受け身なことです。「もう少し主体性を発揮しようよ…」と言いたくなるような場面も多々あります。

あえてメリットを挙げると、余計なことをしないため、余計な問題は発生しにくいことでしょうね。言ってみれば、加点はできないけど、大幅に減点すべき「やらかし」もない、というのが指示待ち部下の特徴だと思います。

「指示無視」部下のメリット・デメリット

一方で、指示無視部下のデメリットは、余計な問題を引き起こすことです。「なぜ勝手にやったんだ」「どうして指示と違うことをするんだ」という状況が生じがちで、想定外の問題も発生します。これは非常に困ります。

指示無視部下のいいところは、考えが稚拙だったり、方向性がずれていたりする可能性はあるものの、自分で考え、行動しようとする積極性でしょうか。

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余計な問題を引き起こす「指示無視」の方がデメリットは目立ちますが、改めて考えてみると、何も考えずに言われたことしかしない「指示待ち」と比べて、「指示無視」の方が悪いとも一概には言えないように思います。

あえて選ぶならどっちか。散々考えた結果は「どっちも条件付きでアリ」。条件を満たさなければどっちも無理、というのが私の結論です。

あえて選ぶなら

指示待ち部下が伸びる条件

指示待ち部下をよしとする条件は、「自分で考えてみて」という指示が通じることです。つまり、こちらで「ここまでは自分で考えてやってみて」「今後はここは自分で判断して」というような指示を出し、それが通じる人であれば、指示という形を取りながら、実際には自分でやってみるように導くことができます。

人事制度を設計する際、部下を管理できないマネージャーがいると、評価表に「部下の管理をする」という要素を入れ、管理できないと評価が上がらない仕組みにすることがあります。同様に、指示待ち社員に対しても、指示の中に「自分で考える」を入れるのは試してみる価値があると思います。

こういう指示が通じる社員は、「言われたことしかやりたくない」「それ以上のことはやる気がない」のではなくて、「もし勝手なことをして間違えたらどうしよう」「周りに迷惑をかけたらどうしよう」という不安を抱えている人です。

自分の評価が悪くなることを恐れるあまり、余計なことはしないでおこう、指示されたことだけちゃんとやろう、という思考に至っています。

こういう社員は「消極的・常に受け身」という指示待ち社員の問題を克服できるかもしれません。自分なりに考えた結果、「指示待ち」を選択しているのであれば、指示の出し方によっては伸びる余地があります。

指示無視部下が伸びる条件

指示を無視して突っ走る社員を受け入れるには、その行動の出発点が「顧客/会社のため」であることが条件です。

「自分がラクだから」「自分はこうしたいと思ったから」ではなくて、「お客さんのためにこうしたらいいと思った」「会社のみんなのことを考えた結果、こういうふうに工夫した方がいいと思った」という感じですね。誰かのために、という思いからの「指示無視」であれば、育成は可能かもしれません。

指示無視社員の問題は、相談なしに行動してしまう点にあります。これは視野や視座の不足に起因しています。上司としては、アイデアが浮かんだ時にすぐ行動に移さず、相談さえしてくれればオッケーなんだけどな、ということも多いはず。そうなれば、積極的に意見を言ってくれる社員に早変わりですからね。

それには部下自身に「報告・連絡・相談すればオッケーなんだ」と気づいてもらわなければなりません。上司の方から、なぜ報告や連絡、相談が必要なのか、その背景や目的をしっかり伝える。あるいは、部下がよかれと思ってしたことが結果的にはマイナスに働いた場合、指示に従うべきだった理由を示す

これで指示無視部下も「自己判断で行動すると視野が狭くなるんだな」「発想に限界があったかも」「勝手に動いて周囲に迷惑をかけてしまった」と気づくことができます。

指示無視行動の出発点が「みんな/お客さんのためになりたい」というところにあれば、上司に認めてもらいたくて自分なりに工夫してみるという姿勢は、チームに活かせる可能性もあります。経験を積み、学んでいくことで、指示無視部下には変身する余地があると思います。

条件を満たせない限り、どちらも難しい

問題は、ここに述べた条件を満たしていない「指示待ち」または「指示無視」の部下たちです。

消極的で、言われたことしかやらず、「自分で考えてみて」と言われても具体的な指示がないと動けない人。または、アイデアがあるのはいいですが、独断先行が問題だと理解できず、「事前に相談して」と言われても自分の考えを押し通してしまう人。

会社は組織で動いており、組織として顧客に対して責任が発生します。上の条件を満たせない部下は、私としては指示待ちも指示無視もどっちもナシです。指導・育成を行っても改善が見られない場合、私なら、どっちにも船から下りてもらうという判断をしますし、実際にそうしてきました。

今日のひと言

積極性と素直さは指導できない

消極的な部下に積極性を持たせることは難しいと思います。いくら積極性を持てと言ったところで、本人にその気がなければ困難。

それから、素直さも指導できません。なぜダメなのかを説明しても自分の考えを優先するような部下は、そう簡単には変わらない。

特に大人になったら外から考えを変えるのは難しいですし、教育機関でもなければチームがそこまで面倒を見ることもできません。

「泣いて馬謖を斬る」というように、組織の規律や全体の利益を守るという観点から、チャンスを与えても自分を改めず、一線を越えた社員には船から下りてもらうしかない。これが私の考えです。

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。