コラム

03. 当たり前…相互理解を潰す禁句

2019年02月20日
人事労務は海外経営の基礎

現地に来て、様々な想定外や仰天びっくりに遭遇すると、つい、「こんなの当たり前でしょ」「普通にやれよ」「常識だよね」などと言いたくなります(私は中国に14年いますが、やはり言いたくなります)。

つい使う便利な表現ですが、実は非常に危険な言葉。なぜなら、当たり前・普通・常識・当然などは、言葉を換えれば「言わなくても分かるよね」。相手が背景や理由を理解できるように説明する、という努力や工夫を省略する態度だからです。

このため、相手は「なぜそうしなければならないのか」「なぜ、自分のやり方ではいけないのか」について、まったく理解が深まらない。一方的なコミュニケーションに抵抗感や反感を持つかもしれません。そして、意味が分かっていないので、いずれ、また同じことをやります。

こちらも、相手が「なぜこんなやり方をしているのか」「なぜルール通りにやらないのか」について、理由や背景を理解することがない。だから、相手が分かるように説明するということもしません。

 結果、「なんで、そんなこと言われるんだ」と「なんで、やらないんだ」の相互不信だけが残ります。

同じようなことは、中国の社員側にもあります。新しい試みや改革案に対して、「中国では無理です」「この会社ではずっとこうやっています」などと否定する。これも当たり前や常識と同様、「駄目なものは駄目」という相互理解を潰すコミュニケーションです。皆さんは、これを聞いて引き下がってはいけません。

 お互い、「なぜ」まで掘り下げて、相互理解を深めてください。

2018.06 BizChina誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。