コラム

09. 義務教育と学習支援は分ける

2019年05月21日
人事労務は海外経営の基礎

社内研修や教育は相談の多い領域です。内容やテーマ以外で気になるのは、「時間外や土曜日に研修を実施したら、残業代や代休は出ないのかと聞かれた」とか「出張や緊急対応を口実に参加しない輩がいる」とか「携帯いじりと居眠りばっかりで……」といった相談です。

研修は経営者にとってハードルの低い人材育成策ですが、参加者の人件費や犠牲にする業務の価値を考えれば、効果追求の工夫をしないと費用対効果の悪い手段です。上記のような課題を解決するには、研修を「義務教育」と「学習支援」の二つに区分する必要があります。

安全・5S・就業規則など、対象者全員が理解していなければならないことは義務教育。興味があろうとなかろうと全員強制参加です。義務教育系研修の効果は、研修後の理解度確認テストなどで確認します。不参加者や落第者は再受講させ、全員の理解・習得が確認できるまで実施します。

本人に選択の余地がない義務教育ですので、原則として仕事時間内に実施します。難しい場合は残業代や代休を支給します。強制参加させながら給与支給しないと、本人たちには不満ばかり残り、費用対効果が下がります。逆に、出すものを出しておけば、「給与支給する仕事の一環なんだから、四の五の言わずしっかり参加せよ」という態度を取ることができます。同様に、仕事だからこそ、「合格するまで再受講・再テスト」という運用も可能となります。

2018.12 BizChina誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。