コラム
31.引き算で経営を現地化してはいけない
夏過ぎから、日本で無期延期となっていた委員会や登壇機会が復活しました。そこで中国事業を持つ経営者の皆さん(とくに中堅・中小企業)から聞く話が気になっています。
曰く「これまで赴任者を置いたり、出張で現地管理を行ったりしてきたが、新型コロナで人を送れなかったため、やむなく現地側に仕事を任せた。どうなることかと心配したが、意外なほどちゃんと回っている。これなら無理して日本から人を送らなくても、現地に任せて大丈夫そうだ」。
私は、こういう会社が増えるのではないかと、かなり心配して事態の推移を見守っています。現地でこれを読む皆さんは、私の心配に共感していただけるかもしれません。表面上、日常業務が回っているように見えることと、実際に内部で起きていることは別物だということを目の当たりにしているでしょうから。
これを書いていて思い出したのは、伊勢志摩に行った小学校の修学旅行。大箱の立派な料亭らしきところで昼食を取りましたが、手洗いに立った際、たまたま裏側の階段にずらっと料理を載せた盆が直置きしてあるのを見てしまいました。その階段の汚れ具合や盆を這っている子Gを目の当たりにしてしまい……(食事中の方ごめんなさい)。席に戻ってからさすがに箸をつけられませんでした。
いまなら分かりますが、これは「よくある話」。自他共に認める「清潔な国」の日本でさえこれです。誰かが目を光らせていなければ、裏と表が乖離していくのはむしろ自然。結果オーライ文化の中国はでなおさらです。
2020.11 BizChina誌
この記事を書いた人
多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。