コラム

時代変化に適応する駐在員…現地社長は”○○”になれ!

2019年05月28日
日本流が通用しない時代の組織経営

十月後半から天津は一気に冷え込んできました。毎年言っている気がしますが、十月中旬ぐらいまでは、集中暖房なんてむしろ汗をかきそうな感じ。十一月に入ると急に集中暖房が待ち遠しくなる。数週間の気温変化が本当に激しいですね。

日本は、ようやく長かった台風の季節が終わり、いよいよ紅葉シーズン。花見の春とならんで訪日旅行者が待っていた季節です。今年はどんな山奥まで外国の皆さんがやってくるのか、どんな楽しみ方をするのか、私はむしろそちらに興味津々です。日本のあらゆるところで、あらゆる楽しみ方をする外国人を見ていると、なんだか日本人の自分は、日本のエンジョイの仕方を忘れてしまっているんじゃないかと考えさせられます。

訪日客が増えることで、商売が潤ったり、いろいろなトラブルも増えたりという話を見聞きしますが、そんなことより、日本の日常をエンジョイしている笑顔の人たちが増えたことで、日本全体が明るく楽しくなることの方が、重要な変化なのかもしれません。

前回、心を鬼にしてでも行わなければならない改革があるのなら、逆に従業員たちから親近感を持ってもらう必要がある、と書きました。これは、社内世論がなんとなく皆さんに味方する状態をつくる、という意味です。痛みを伴う改革でも、積極的抵抗者は全体の5%程度。従業員の大多数が様子見でいてくれれば、改革で戦わざるを得ない相手は全体の10%もいません。しかし、大多数が煽動や流言に乗ってストライキなどを起こすと、改革以前に騒動の始末をつけなければならなくなります。

では、どうやって親近感を持ってもらうかですが、普通に考えれば大変そうな、大組織のリーダーほど、実はこの面で有利です。

現地社長は、アイドルとして振る舞うべし

千人規模の大きな組織の場合、トップが全員と顔見知りになるのは、おそらく不可能です。工場が複数あったり、複数拠点を束ねていたりする場合はなおさらです。本社での会議、顧客との会合、役所関係の対応など、社内にいないことも多く、従業員との関係づくりの時間なんて、ほとんど取れそうにない。私が相談を受けた日本のある社長も、同じような悩みを抱えていました。

社「これまでA社(ある現地法人)は別の役員が管掌していたため、自分はノータッチだった。だけど、前期から日本の社長を引き継いで、各海外現法の情況も精査してみると、Aは非常にマズい状態に陥っているのが発覚した。グローバル売上の四割ぐらいを占める最大拠点だけれど、以前の積極投資と最近の受注減のダブルパンチで、昨年から実質赤字に転落した。Aが沈むと全社が持たないので、今年から自分が現地社長兼任でやることにした。ただ、工場は離れて四つあるし、それぞれ千人規模で複雑な人間関係があるし、最近は第一工場で労働問題まで起きて不穏な空気だと聞いている。しかも、先々代の現地創業社長が大盤振る舞いしたりしたので、ほとんどの従業員は彼への思いが強く、それを否定して引き締めるためにやってきた俺なんか、けちょんけちょんだよ。。俺、他の拠点も見なきゃいけないし、どこから手をつければいいかと思って」

小「まず、社内世論を味方につけちゃいましょう。社長は現場社員のアイドルになってください」

社「?!」

小「社内がこんな状態で、社長は他国も飛び回るし、とにかく忙しい。まず、いまから二つのことだけやってください。一つは、現地滞在時はできる限り各工場に顔を出すこと。短時間で構いません。もう一つは、工場へ行ったら、とにかく各現場を回って、笑顔で声をかけてください。やぁやぁどうも♪って。これだけ。どんなに忙しくても続けてください」

2018.11 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。