コラム

時代変化に適応する駐在員…親近感を持ってもらう

2019年07月09日
日本流が通用しない時代の組織経営

これを書いている一月下旬、日本経済新聞の朝刊一面トップに「中国経済の減速鮮明」の見出しが躍りました。昨年末以降、日本のメディアは中国経済の変調について相当な頻度で取り上げるようになっています。私は自分で街角定点観測を行っていまして(そんな大したものではありませんが)、驚きはありません。2016年ぐらいから「景気はかなり悪い」と聞くようになり、2017年は「昨年より悪い」、2018年夏ごろには「商売も株も理財もぜんぶダメ。よくなる材料も皆無なのでお手上げ」と聞きました。米国との紛争はダメ押しのような効果を生みましたが、そこから悪くなったわけではないと思います。

この状況で私が言って回っているのは「体力があれば、いま攻めるべき」。特に人材面。これから日系企業は、優秀な人材の獲得や維持に苦労する時代がやってきます。日系企業の給与体系や仕事内容が中国系など他社に見劣りし、後れを取るようになっていくためです。経済状況が厳しく優秀な人材が市場に出てきやすい現在、採っておかないと将来採れなくなります。

また、景気回復期の動きの速さでは、残念ながら中国系企業には勝てません。材料や設備や人材の取り合い局面になったら、日本企業は後手を踏みます。いまから手当しておく、算段しておくというのが、日系企業に取りうる備えだと思います。環境が厳しいからということで他社と同じ緊縮対応に終始していると、さらにジリ貧となる恐れがあります。会社と一緒に「挑戦」「成長」「貢献」してくれる従業員たちが、納得感・充実感を持って仕事できる環境を整えていくというのも、この時期の重要な施策です。

厳しい時期にこんな経営判断ができるのは、その立場にある駐在員の皆さんだけ。経営者(駐在員)のリーダーシップ発揮が求められる局面だと思います。

 

ということで、「時代変化に適応する駐在員」編、書いてきたことを整理しておきます。

□中国の事業環境は大きく変化し、駐在員の仕事難度はかつてなく高まっている。同時に、すでに始まっている環境変化に対応するためには、駐在員が果たすべき仕事が非常に重要である。

□駐在員が求められる役割を発揮するためには、

①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

このうち最低③をクリアし、④⑤に至る必要がありますが、大組織の経営者は「社内のアイドルになる」ことが親近感を得る近道という話まで書いてきました。

これ以外に親近感を持たれるポイントをいくつか挙げます。

□毎日こちらから声をかける
□中国語読みで名前を呼ぶ
□カジュアルな店で食事会
□ときどきおごられる
□部下に相談する
□人によって態度を変えない
□仕事には厳しいが横柄ではない
□身なりも言動も清潔感

毎日ちゃんと挨拶できるか、というのは幼稚園・小学生の取り組み課題ですが、意外に大人の方ができていなかったりします。「部下の方から声をかけるものだ」とか「いまさら気恥ずかしい」などというのは五歳児レベル。ちゃんと声をかけて挨拶してください

そして、彼らの名前はがんばって中国語読み(彼らの本来の音)で呼ぶ。少々ハードルが高いですが、それだけに稀少価値があります。名簿を用意してピンインかカタカナを振ってもらい発音の練習をする。何度でも発音を直してもらう。過去の赴任者がそこまでやっていなかったのであれば、なおさら挑戦すべきです。私だって「シャオダオ」と言われるより、日本語のできない相手から「小島さん」と言われた方が、尊重してもらっている感じを受けます。

2019.02 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。