コラム

時代変化に適応する駐在員…たまにはご馳走になる

2019年08月06日
日本流が通用しない時代の組織経営

十五年近く天津に住んでいた間、気候に絡んで快適だったことが三つあります。一つは梅雨がないこと、もう一つは集中暖房、そして春に花粉症が出ないことです。

半分日本にいる今年は、久しぶりに花粉症が本格復活。微粒子を寄せつけない顔スプレー、鼻うがいセット、マスク、サプリ、薬……とかなり手を広げて試す羽目になりました。中国に渡る前は目のかゆみと鼻でしたが、いまは、くしゃみと喉。変わらないのは、中国に来るとピタッと収まることです。人工の微粒子は飛ぶけれど花粉は飛ばない。花粉症が深刻な人にとっては、中国の方が健康的な環境かもしれません(季節限定)。

花粉症は、人工林の問題が大きな原因の一つだそうですから、ある意味「人災」。人間側の対処療法だけでなく、自然を本来の形に戻すことで、環境そのものを健全にできたらいいな、と思います。

 

前回は「せっかくご馳走するなら親近感を高める工夫を」という話でした。今回はその続きです。

ときには部下たちに ご馳走してもらう

部下たちを食事に連れて行っていると関係が近くなっていきます。すると、ときどき部下に「今日はオレらがご馳走します」と言われることが出てきます。

ここで自分の立場を考えたり、日本流の配慮が前に出たりすると、つい、「いやいや、私が声を掛けたんだし、いちおう立場もあるんだから、私が参加するときは私が払うよ」などと言ってしまいがち。そもそも、前回のポイント(食事に誘うならカジュアルなお店で)が押さえられていないと、日本料理屋や高級店にばかり行きがちなので、支払金額を考えたら彼らに払ってもらうのは負担が重すぎてマズい。ということで、支払いは自分でしてしまうことが多いかもしれません。

でも、いつもご馳走してばかり、というのは、彼らとの関係づくりという点では非常にもったいないです。もっと辛口に言うと、人情の機微が分かっていない。

いつもご馳走になってばかりの関係って、常に上下を意識させられる関係ですよね。それに中国は「面子(ミエンズ)」の国。ご馳走するというのは面子が立つ重要な機会なのに、それを毎回総取りしていることにもなってしまいます。

こちらは、負担を掛けさせまい、上司としてケチなことはできないと、もしかしたら多少無理をしてご馳走しているのに、実はそれが裏目に出ているとなったら、すごく残念なことです。

彼らとの関係を縮めるためには、喜んでご馳走になりましょう。前回との合わせ技でカジュアルな店にしておけば、ご馳走になっても彼らの懐はそれほど痛まないという利点も。ご馳走になる際は、嬉しそうにご馳走になって彼らの面子を立てます。「え、本当に!? いいの? いや〜ありがとう。だったらせっかくだからビールもう一杯(笑)」みたいな感じで、おごられ上手になってください。

たまにご馳走してもらうことで、彼らと皆さんの関係はバランスが取れます。一方的な関係より、ご馳走しあう関係の方が距離は縮まりますよね。彼らが「ご馳走します」と言ってくれないなら、焦らずまずは他の工夫で関係づくりを進めましょう。

●駐在員が求められる役割を発揮するために必要なこと
①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

●親近感を持たれる工夫
□毎日こちらから声をかける
□中国語読みで名前を呼ぶ
□カジュアルな店で食事会
□ときどきおごられる
□部下に相談する
□人によって態度を変えない
□仕事には厳しいが横柄ではない
□身なりも言動も清潔感

2019.04 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。