コラム

時代変化に適応する駐在員…直接対話のススメ2

2020年11月18日
日本流が通用しない時代の組織経営

国慶節を迎えました。今年の春節は、のんびり・エンジョイどころではありませんでしたので、中国の市井の皆さんにとっては、本当に久しぶりの休暇シーズンだと思います。現地で陣頭指揮を取る日本人の皆さんにとっては、帰国も国外旅行も叶わず、完全休養というわけにはいかないでしょう。お疲れさまです。少しはリフレッシュできているといいのですが。

現地にいらっしゃる皆さんに日本の空気感をお伝えすると、お盆から九月の四連休(シルバーウィークと言うそうで)あたりの一か月で、非常に大きな変化がありました。お盆ウィークは帰省自粛が話題になり、旅行どころか帰省も断念という話が社会現象に。それが九月の連休では行楽地も繁華街も人の山。とりあえずマスクをしていることを除けば、コロナ自粛は雲散霧消したようで、すっかり様変わりしました。

世界で見れば、まだ感染拡大・再拡大が続いており、ワクチンや治療法の確立も道半ば。安心できるような状況にはないのですが、人類は新型コロナ下の社会に慣れつつあるようです(適応したとまでは言えないものの、慣れたとは言えるのではないかと)。

今年の春節から国慶節までの変化は「激動」と言うにふさわしいものでした。この国慶節から来年の春節までにどのような変化があるのか。北半球はこれからウイルス感染症が流行しやすい季節を迎えますが、来年の春節あたりには前向きな材料が増えていてほしいですね。日中の往来も正常化に近づいているとよいのですが。

 

さて、前回は相互信頼に至るため「直接対話」を強くお勧めすると書きました。ただ、現実には言葉の壁がある。なのに直接対話せよとはどういうことか。もちろん、現地の言葉をがんばって学びましょう、みたいな理屈は正しいけれど、実務で間に合わん助言をするつもりはありません(長い目で見たら、これも大事ですよ♪)。これは、言葉が通じない前提での「直接対話」のススメです。

直接対話の目的は指示・報告ではない

私の話の前に、実際に直接対話を活用していた経営者の実例を紹介しましょう(以下、経営者=経、現場の社員たち=現)。

光景……経営者が現場を歩いていたら、現場の社員たちが機械の前に集まってワイワイ話している。ラインが止まっているので、どうもこの機械に問題がある模様。

経:「どうしたん?」(日本語で。以下すべて日本語)
現:「#$%&*@%」(中国語でわーっと。以下すべて中国語)
経:「いや、分からへんで。ここに書いて」(小脇にはさんだミニ白板を差し出す)
現:(困惑しつつ、一生懸命何やら文字を書いて返す)
経:(手を振りながら)「俺読めへんで。図とか絵で描いてよ」(白板を消して、機械を指さしつつ、簡単な絵を描いてみせる)。
現:(描いては消して……をしばらく続けていたが、最後は機械の一部っぽい絵を描き、型番らしき英数字を書き、止まっている機械の一部を指さして、×マークをつくった)
経:「あ、LL—251510が破損したんか」
現:(型番の発音を聞きうなずく)
経:「これ日本に在庫あるやろ。金曜に来る出張者に持たせたらええわ。俺の方で言っとくよ」

●駐在員が求められる役割を発揮するために必要なこと
①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

●相互信頼・尊敬のために
□リーダーの実力を示す
□現場に寄り添う
□一罰百戒を使いこなす
□大義名分に本気を見せる
□直接対話する

2020.10 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。