コラム

時代変化に適応する駐在員…直接対話のススメ7

2021年08月20日
日本流が通用しない時代の組織経営

新型コロナのせいで国際的な移動がほぼ消滅して一年あまり。ワクチン・パスポートという考え方を検討の俎上に載せる国が徐々に出てきました。ただ、お互いの国でそのワクチンを承認していることが大前提になるでしょうが、すでに接種が進んでいるワクチンだけでも何種類もあります。それから、ワクチンが有効といっても100%に近いわけではないですし、有効性の中身が感染リスクを下げられるのか、他人への感染力を弱められるのか、感染時の重症化を緩和できるのかによっても、入境時のハードルをどこまで下げていいかは変わるんじゃないかと思います(素人の想像ですが)。

それから、中国と日本のコロナ対策を見ると、本当に大人と子供くらいの差がついているんじゃないかというほど徹底度も合理性も違いを感じてしまいますが、国内対策を徹底できている中国だからこそ、緩い国との往来再開はタイミングが難しいかもしれないなと思います。日本は最初から緩いので、門戸を広げても大きく変わらないような。

一方、私が毎週やっているオンライン・セミナーや、お送りしているレターにいただくお便りを見ていると、ずっと中国に留まったままの皆さんから、切実な内容をいただいてグッときたりします。「コロナの後、現地に赴任する際は、まだ一歳の娘と離れるのが本当に辛かった。コロナがなければ、休暇や出張を利用して顔を見ることもできるけれど、いまは次いつ会えるかも分からない。とにかく早く普通に往来できるようになってほしい……」。

これを読んでいただいているのは、ほとんどが仕事で現地を離れられない皆さんでしょう。責任感・気合い・根性にかけての日々の仕事、本当にお疲れさまです。

往来の緩和に向けて、私にできることは残念ながらほとんどありません。でも、皆さんの日々の苦悩・痛み・疲弊の原因を減少させたり、手が足りない・応援が必要といった事態を解決させたりすることには、多少お役に立てるかもしれません。ぜひ、ご自身を労りながら、楽できることは楽しながら、長丁場を乗り越えていただければと思います。

●直接対話の利点
□尊重されている感じがする
□お互いの距離が近くなる
□仕事の速度が上がる
□致命的な誤解が減る

直接対話の利点。三つ目に仕事の速度が上がります。通訳してくれる人に依存していると、その人が不在の際、仕事が止まる。部下は「直接言っても無駄だから」と報告や相談を後回しにするでしょうし、皆さんも指示や確認事が出てきた際に「まぁ後でいいか」となります(そして忘れたり、タイミングを逸したり)。

直接対話の関係が築けていると、お互いとりあえず話しかけます。意味がどこまで通じるかは分かりませんが、切迫度や重要度や感情は伝わります。また、通訳担当がいる場合でも、実は直接対話の方が早い局面があります。なぜなら、現場の設備や競合相手の情報など固有名詞・専門用語を伴う話の内容を一番理解できないのは通訳担当だから。経営者や各部署の人たちは、固有名詞や専門用語を聞けば何の話かピンときます。実際、通訳担当だけが理解できず、通訳すればするほど経営者も社員もイライラを募らせるという場面に何度も遭遇したことがあります。

駐在員が求められる役割を発揮するために必要なこと
①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

●相互信頼・尊敬のために
□リーダーの実力を示す
□現場に寄り添う
□一罰百戒を使いこなす
□大義名分に本気を見せる
□直接対話する

2021.04 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。