コラム

大人も真剣勝負で大変やな

2022年05月20日
日本流が通用しない時代の組織経営

最近、ちょっと嬉しくも気の引き締まることがありました。昨年から毎週水曜の昼過ぎにライブのオンラインセミナーをやっているのは、確かここでも触れたことがあります(本コラムを読んでいただいていて、まだ一度も覗いたことがない!? それはもったいない。書けないことも話していますので寄っていってくださいね♪)。昼過ぎのセミナーなので「昼セミ」。昼セミの参加者の方から、こんなお便りをいただいたんです。

「同僚を誘って参加させていただきました。日本のガラパゴスに埋没しないよう時々お邪魔しますね。毎回ガツンとくる内容にて、私のなかでは、世界の中での立ち位置を忘れかけた時に、現実に引き戻してくれる大切な場所です。
帰宅してから小学3年生の息子に内容を話しているのですが、ゲーム機を放り出して聞いてくれます。

海外拠点で不正を発見したらの回は、「大人も真剣勝負で大変やな」だそうです。学校でどんな真剣勝負しているものやら…」

まず小学生のお子さんとこういう会話ができるのは素敵ですよね。そして「大人も真剣勝負で大変やな」のコメント、これが嬉しい! 私はとくに中国へ渡ってからの十七年間、ガチンコの真剣勝負に明け暮れてきました。最初は自社内の戦い。合弁会社で、投資方の方向性はバラバラ、社員たちはアバウトな仕事、業績ゼロの状態から、戦えるチームに変えるのに心身を削りました。これはオーバーな表現ではなく、ストレスで甲状腺機能亢進と診断され、半年で体重が十キロ近く落ちました。そこからは、お客さまの深刻な問題と戦う日々。問題社員の解雇、幹部の不正、取引先とのトラブル、ストライキ、リストラ、撤退、夜逃げ……。真面目や一生懸命ではまだ足りない。やるかやられるかの真剣勝負を繰り広げてきました。

それだけに、小学生にも親御さんや私たちの真剣さが伝わったら、非常に嬉しいです。子供は正直で大人の欺瞞を見抜きますから。口だけ、形だけのキレイ事には反応してくれません。ただ、これは今後の仕事で手を抜いたり、形ばかり整えたり、大人のずるさで妥協したりすると、子供たちにすぐそれを見抜かれるということでもあります。子供に「大人の真剣勝負、すげぇなぁ」とか「大人の本気勝負って大変そうだ」と思ってもらえるためには、やはり手を抜かず、逃げもせず、真剣勝負・本気の戦いに挑み続ける必要があります。しんどさもありますが、子供たちが真剣さ、凄みを感じるような仕事をしていきたいなと改めて思いました。

 

モグラ叩きの労務管理を卒業するという本題も、大人の真剣勝負の話とつながります。経営者としてシビアな判断を迫られたとき、厳しい措置を決断しなければならないとき、本音では逃げたくなります。もちろん私も気が重くなります。ただ、妥協策や穏便策を取るのであれば、それが本当に会社全体のため、相手のためなのか自分の胸に手を当てて考える必要があります。心のどこかに「自己保身(業務に影響が出たり、紛争が日本側に伝わったりして、上司からマイナス評価されるのが怖い)」や「逃げ(厄介事や裁判沙汰の対応なんてしたくない)」があるのに、それを会社全体や相手のためであるかのように偽っていないか。

子供が見たらどう思うか、欺瞞や糊塗を感じないか、「大人はズルいな」と冷ややかに見ないか……という観点でチェックすると、自分の判断や決断を客観視できるかもしれません。

私も、今後のシビアな案件では、リーダーの皆さんにこういう問いかけをしていこうと思います。今回の方針は問題の根・課題の幹に切り込むものか。それともとりあえず出てきたモグラをコツンと叩くようなものか(根幹を切らないので、再発の可能性が否定できない)。リーダーとして現地に赴任するような皆さんであれば、自分自身でその答えが分かっているはず。お互い、子供たちに胸を張れる仕事をしていきましょう。

2021.10 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。