コラム

中国人社員の縄張り意識は尊重すべき?

2025年01月03日
中国駐在…変化への適応さもなくば健全な撤退

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管理職でも担当者でも、中国拠点の社員って縄張り意識の強い人が多いですよね。自分の仕事にキッチリ線引きして、それ以外には手を出そうとせず、逆に出されるのも嫌がる。こういう状況は中国特有の職場文化として活用すべきなのか、それとも改善すべきなのか。改善するならどうやって? 私の考えをお話しします。

毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
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中国人社員の縄張り意識はかなり強い

現地の最前線にいる駐在員は、中国人社員の強すぎる縄張り意識に日々頭を痛めているのではないかと思います。

何かといえば「それは私の仕事じゃない」という態度を取る。逆に「ここはアンタが口出しする領分ではない」と突っぱねる。

部署間の会議でも、建設的な意見を交わしたり、批評し合ったり、議論したりはしない。あたかも「そっちの領域は侵さないから、こっちにも首を突っ込むなよ」という不可侵・不干渉のルールを締結しているかのようです。

しばしば見受けられるこの状況。これもお国柄だと尊重すべきでしょうか。

結論を先に述べれば、「壊すべき」です。

なぜ縄張り意識を持つのか、考えてみてください。自分の仕事・部署の仕事を既得権益と勘違いしているからです。自分と業務が一体化してしまっている。仕事はすべからく会社に所属するものであって、「あなたの仕事」じゃないよねと言いたいところです。

縄張り意識は業務のブラックボックス化をもたらします。抱え込んで外に出さないということは、効率化も図れないし、引継ぎにも支障が出ます。リスク管理ができず、不正の芽を摘むこともできません。

また、自分の仕事だけやればいいという姿勢では部分最適にしかなりません。経営は会社全体で機能して初めて意味があるのに、自部署にしか関心がない人の集合体では、全社利益の追求ができない。

このように、縄張り意識を放置しておくと、どこを取っても会社にとっていいことはありません。今日のタイトル「尊重すべきか?」に答えるなら、「潰した方がいいに決まっている」です。

しかし、果たして縄張り意識は潰せるのか。中国みたいにセクショナリズムが強い国で、縄張りを壊してしまったら、組織がぐちゃぐちゃになるんじゃないか。

誰もが懸念する組織崩壊を回避しつつ、どのように縄張り意識を潰していったらいいのか、考えてみます。

縄張り意識の潰し方

要点① 上から潰す

下から潰していくのはただの尻尾切り。現場の若い人たちにはまったく納得感がありません。若手を入れ替えても上の方は同じことをしている。若手の不平不満がつのるだけです。上から着手するのはもちろん大変ですが、上に手を突っ込めないなら、下にも突っ込むべきではありません。

要点② 異動・新陳代謝を使う

今の業務(既得権益・権力)を抱えさせたまま理屈を説いたところで、誰も動きません。

ガシッとホールドしているところから強制的に手を離させなくてはならない。とはいえ、部署や個人をピンポイントで狙い撃ちすると反発が起きますから、そうならないように仕組みを作りましょう。

まずは管理者・役職者。私は最近、役職任期制を多用しています。これは非常に効果的。異動させる権限が必然的に会社側に移ります。

人が動くことになれば、「これは私の仕事」という対象が定期的に入れ替わるので、縄張り意識が根っこから切れます。抱え込みができなくなるわけですね。

役職者でない場合はどうでしょう。なかなか自分の仕事領域を手放したがらない部署、例えば経理や保全などで役職者の任期制や担当者の入れ替えを実現するのは難しそうです。

こういうところでは、昇格要件に「違う部署へのチャレンジ」を入れておくという方法があります。

一定の等級まで上がったら、そこから先は複数の部署を経験していないと昇格できない仕組みにする。自分の仕事にしがみついている人は、それより上の役職にはエントリーできません。

そうすると、昇格を望む人は複数の部署を回らなければならないため、縄張り意識が残っていたとしても、実質的に業務を抱え込めなくなります。

残るは、昇格しなくてもいいから手を離したくないという人です。ここで挙げた方法ではすぐには解決できませんが、上述の仕組みさえ運用してしまえば、あとは時間の問題です。縄張り意識を持たない人たちだけが昇格していき、それが当たり前という風土ができれば、担当者レベルの縄張り意識は意味をなさなくなります。

残念ながら、人間は35歳を超えるとなかなか考え方を変えられないものです。いろいろな施策を打っても変われない管理職は、そういう人でも活躍できるポジションに移ってもらわなければなりません。

異動と新陳代謝をフルに使って、会社が求めているものを理解し、受容し、適応して、力を発揮できる人だけを要職に配置していきましょう。

要点③ 評価や処遇を使う

社員に会社の望む方向へ動いてもらうには、社員にとっての切実な利益と連動させていかないと、会社の本気度が伝わりません。

ここは北風と太陽、両方とも使います。北風というのは、いつまでたっても自分の業務を透明化・標準化しない、あるいは他の仕事にチャレンジしない人たちの評価を下げること。5段階評価なら既存業務をそつなくこなせても基準2までしか評価しない。連動して昇給・賞与・昇格なども明確に抑える。

逆に、積極的に新しい仕事に挑戦する、業務を抱え込まずに部下に振る人には高い評価をつけます。自分の仕事を標準化する、省力化を図る、文書化することも昇給・賞与・昇格などにつなげます。

この発想で長年の縄張り意識を解消した会社があります。

中国系の製造業で、製造部門と保全部門の仲がすごく悪かった。ラインが止まるたびにケンカになっていました。

製造は「保全の連中は何やってんだ!また止まったぞ」と怒り出す。一方、保全は「どういう設備の使い方をしてるんだ!ちゃんと手順通りに仕事しろよ」と製造を非難する。長年、お互いに責任をなすりつけ合うばかりでした。

この状況に悩んだ会社はどうしたか。製造と保全という部署の区切りをなくし、ラインごとに製造担当者と保全担当者をセットでつけて、各ラインの稼働率と担当者の処遇を連動させました。

つまり、同じラインに入る製造と保全の利害を一致させ、協力して稼働率の向上を図っていかないと実入りが下がる仕組みにした。結果、部署間のいがみ合いは半年も経たずに解消したそうです。

それから、幹部は評価も賞与も全社業績と連動させます。いくら自部署がきちんとできていても幹部としては評価も賞与も上がらないと理解できれば、他の部署にも口を出して横連携しはじめます。

今日のひと言

縄張り潰しは施策総動員で

縄張り潰しは施策を総動員してやりましょう。人事制度、役職の任免、組織の枠の組み替えなど、使えるものは全部使って、徹底的に潰していく。縄張り意識が残っていると、いつまでも部分最適ばかり追求することになります。

会社全体の業績や組織力を高めるという観点では、セクショナリズムなんてあっていいことは一つもありません。施策総動員で潰す価値のある経営課題です。ウチは縄張り意識が強いなという拠点は、優先度を上げて解決に取り組んだ方がいいと思います。

 

 

2025.01.03 note

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。