コラム

【広東・上海版】03.いい人材が採れない”時代の採用戦略…梅

2022年05月14日
人事労務は海外経営の基礎

このところ、中国では「いい人が採れない」という声が強くなっていますね。皆さんはどうでしょう。

中国で採用が難しくなっていることは間違いありません。一つ目の要因は少子化。データによって差違はあるものの、現在20歳の人たちの出生数は現在35歳の人たちと比べて30%くらい減少しており、今後も減っていきます。二人目・三人目の生育を認める政策変化もこれを物語っています。

二つ目の要因はギグワーカーの急増。ギグワーカーとは、フードデリバリーや滴滴ドライバーのようにアプリなどで都度仕事を受ける個人事業者。二年ほど前に中国では7000万人前後の人が従事していたようですが、昨年は行政の責任者が約2億人と発言しました。推測ですが、若年層の方が多いであろうことを加味すると、すでに若年層の30%近くがギグワーカーに流れている可能性があります。0.7×0.7=0.49。二つの要因だけで考えても15年前と比べて人材市場が半減しているとなれば、採用が厳しくなっていて当然です。

ここまでは「人が採れない」の話。そもそも人が採れなくなっているんだから、いい人を採るのはもっと大変なのは間違いない。しかし、ここで私が引っかかるのは「いい人材ってどんな人材ですか?」という点。これ、意外にすっきりした答えが返ってきません。

よく聞くのは「ハイスペック人材」。イメージするところは「高学歴(留学経験含む)」「資格ホルダー」「多言語(日本語や英語)」「ブランド企業での人目を引く職歴」あたりでしょうか。ただ、ハイスペック人材の採用は、いわゆるレッド・オーシャン。有力中国系・欧米系・日系などが殺到して取り合う人材ですから、よほどの好処遇・好ポストを提示しないと獲得など無理。たまたま採用できたとしても、彼らが満足する仕事の中身・処遇・ポストなどを維持できなければあっという間に他社へ。この激戦に突っ込んでいくのは、私は松竹梅の梅だと思います。

2021.07 Whenever広東、Whenever上海誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。