コラム

【広東・上海版】07.あえて新陳代謝を促す…自分の本音を偽らない

2023年02月22日
人事労務は海外経営の基礎

設立から年数の経った日系企業さんが、本音では何とかしたいと思っている課題の一つが「組織の新陳代謝」でしょう。急にそんなこと言われてもピンとこないよという方は、次の質問を読んでみてください。

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ある日の朝、社員から「話があります」と言われた。聞くと「急なことで申し訳ないが、来月いっぱいで辞めさせてほしい」とのこと。

これを聞いたあなたは、真剣に慰留するだろうか。それとも自分から辞めると言ってくれたことに内心ほっとするだろうか。

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この問いを皆さんが「処遇と仕事のバランスが取れていない」「辞めさせるような話じゃないんだけれどね」と感じている社員に当てはめてみましょう。もし皆さんの答えが後者(内心ほっとする)だとしたら、本当は皆さんにとって「辞めてもらうべき相手」です。これは、経営者の必読書『ビジョナリーカンパニー2』(日経BP)に出てくる問いであり、私自身、この思想に基づいて自他の組織づくりを行ってきました。

これには反論や批判もあるでしょう。自分と合わない相手を切ればいいのかと。私は「そうです」と即答します。組織の最終責任を負っているのは経営者。その経営者が、辞めると言われてホッとするということは、日々顔を合わせながら気力や精力や時間を彼らに取られているということ。累積すれば厖大なエネルギーです。最上位の資源を浪費する余裕は、いまの中国事業にはないはずです。

馬が合わない相手でも、組織へのそれ以上の貢献や価値を認めていれば、辞めると言われてほっとはしません。ほっとしてしまったということは、マイナスがプラスより大きいことの証。辞めさせるとなると面倒、現行業務に支障が出るのが面倒……、いろいろな面倒を言い訳に自分の本音を偽ってはいけません。

2021.11 Whenever広東、Whenever上海誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。