コラム

【広東・上海版】10.持続可能な経営のために必要なこと 序論

2023年08月20日
人事労務は海外経営の基礎

★最初に一つご案内を。この度、弊社の上海法人を設立しました(小島(上海)企業管理咨詢有限公司)。日本・天津法人ともども、よろしくお願いします。

───────────────────────

さて、持続可能な経営が、これからの企業にとって非常に重要なテーマであることは、私が書くまでもないですよね。「SDGs」「ESG」「脱炭素・カーボンニュートラル」……仕事人にとって、関連する記事や言説を目にしない日はないといってもいいでしょう。

これらの概念が対象としているのは、30年・100年といったスケール。私は近江商人の「三方よし」の経営が当たり前という環境で育ち、学生時代に知った「どんなことも7世代先まで考えて決めよ」というネイティブ・アメリカンの思想に感銘を受けた人間ですので、むしろ、ようやく重視すべきことを重視する時代になってきたと思っています。

でも、本コラムで書きたいのは、もっと短いスパンの持続性の話。中国という事業環境における5年後、10年後の持続的発展に対する問題提起です。

私は、2004年から日本企業さんの現地経営の課題解決を手がけてきました。問題社員の解雇や不正対処、取引先とのトラブルは日常茶飯事。合弁事業のケンカ別れ、ハニートラップ、現地トップの裏切り、夜逃げ以外に道がない。たいていのことは経験し、驚くような事態に遭遇することは少なくなりました。

ただ、2020年くらいから、相談いただく課題にこれまでとは質の違う深刻さを感じるようになりました。例えば、「本当に人が採れず困っている」という相談。実情を掘り下げていくと、採用できない→提示給与が低すぎる→全社の処遇自体が低い→事業の利幅減少に歯止めがかからない……という原因が見えてきます。これは人事労務の観点では解決できません。事業構造(利益率)と将来を担う人材の確保がリンクし、負のスパイラルに陥ってしまっています。

2022.02 Whenever広東、Whenever上海誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。