コラム
【広東・上海版】12.持続可能な経営のために必要なこと 私を宗旨変えさせた事件
中国という事業環境における5年後、10年後の持続的発展の観点から、不正・私的利得(背任)行為の打ち止めを、という話をしています。
海外経験・異文化体験などほぼゼロで中国に渡った私は、当初「郷に入っては郷に従え、中国おいて不正やズルを潰しはじめたら事業なんかやれないよ」という大先輩の助言を基準としていました。しかし、それを考えるきっかけになった事件が自社で発生します。
ある初夏の夕方(余談ですが、この話を書いたり話したりすると、いつも当時のオフィスのレイアウト、西日でオレンジに染まった彼らの姿、自分の座っていた場所などが光景として甦ります。よほど強烈な体験だったんでしょう)、ふと気づくと、社員3人が会議スペースで何やら話している。定時をとっくに過ぎているのに珍しいと思っていたら、出てきた3人の目が真っ赤。しかも興奮を押し殺すような様子。ぎょっとして「ど、どうしたの?」と聞くと、先輩格の張が「なんでもない」と答える。見たこともない気配なので、「いやいや、明らかにおかしいでしょ、聞くから教えて」と突っ込む。そんなやり取りを何回かした後、根負けしたように話し始めました。
「今日、昼ご飯を食べていたら、劉楊(仮名、当時いちばん若かった女性社員)が自分たちに向かって『最近、あなたたち妙に張り切って仕事してるわよね。まるで日本人の犬みたい』と笑った。彼女みたいな仕事も半人前の小娘にこんな言われ方をするなんて、腹が立つわ、悔しいわで、収まりがつかない」
話しながら、また憤懣やるかたないという表情の彼らを見て、私はいくつかのことを学びました。①チームにたった一人でも他の社員の努力や貢献を冷笑する人間がいると、組織全体がダメージを受ける。たとえそれがいちばん仕事のできない若輩者だとしても。②こういう社員は代償を払ってでも解雇しなければ、他のメンバーが本気で仕事できない。
2022.04 Whenever広東、Whenever上海誌
この記事を書いた人
多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。