お知らせ

2020.02.14

【新型コロナウイルス感染症関連③】発改委の発言と外務省の呼びかけ

小島です。以下は、2/13に会員レターでお送りした内容です。

以下は私の見解ということで書きましたが、リスク管理の専門家からは「ほとんどの駐在員は非常時に自立して対処できないので、かえって現地スタッフの負担になることもある。むしろ帰して遠隔対応にした方が現地管理にプラスという考え方もある」との指摘をいただきました。これはこれで冷静かつ合理的な見方かもしれません。


中国の企業活動再開に関心を持つ経営者・仕事人の皆さんにとって、気になる情報がこの数日間で立て続けに出ましたね。

一つは、2/11の会合で中国の発展改革委員会が「企業の操業再開に対して、各地方が申請許可制など単純粗暴なやり方で制限することは、厳格に制止すると皆さんに言明する」と発言したこと。

もう一つは、2/12に日本の外務省が中国全土を対象に「日本への早期の一時帰国や中国への渡航延期を至急御検討ください」と公式に呼びかけたことです。

発改委の発言は、(天津市など)期限なく合理的基準なく操業再開が認められないような地域・業種・企業におけるプラスの変化を期待させる内容です。

中央のこのような明確な姿勢から、新型肺炎の感染状況が深刻な一部地域を除いて企業活動の再開・正常化を進めるという方向性が確認できましたので、現地事業を営む企業にとっては明るい材料になったと思います。

#同じ会合では、感染拡大の防止を最優先する、一律の操業再開を進めるものではないといった発言もありましたので、一気に正常化が進むわけでもないと思います。

これで現地の活動に弾みがつくかと思ったタイミングで、外務省の一時帰国「至急検討」の呼びかけが出ました。タイミングとしてはバッチリというか最悪というか企業としてはかなり困惑する状況になりました。

これに関して「どう思うか」といったご質問が集まりましたので、私の個人的見解をご参考までお送りしたいと思います。

日本側がこのタイミングでこの内容を出したことについて、とくに現地状況を把握して対応を進めてきた皆さんは、違和感を覚えたかもしれません。

「逆じゃない?」とか「一か月遅いよ」とか。私もその一人でした。ただ、これについては二つの可能性が考えられます。

□日本政府の対応が遅いだけ。「羮に懲りて膾を吹く」や世論への配慮と責任回避。
□日本政府が国民に開示していない深刻なリスクや状況を把握している。

失礼ながら前者はありそうですが、後者の可能性も排除できません。
そこでいつもこのような事態で見解を伺う大中国通の方に「どちらと思います?」と聞いたところ、「後者」との答えが返ってきてしまいました…。

すでにニュースや解説も出はじめているようなので、特殊情報ではありませんが、どうも「浙江省が第二の武漢(湖北省)になるのではないか」との懸念が強まっているようです。

浙江省となると日本企業や日本人にとっては、湖北省よりつながりが深いですから、日本側への影響も大きくなります。それで早めの対応を取ろうとしている可能性があります。

となると、対応は難しいところですが、私の観点を書いてみます。
#以下は湖北省・浙江省周辺以外を想定しています。

□何らかの発言や明示をすると、中国政府か日本政府の方針に必ず抵触する。

□いまさら操業再開に逆行しても、企業利益になるとは思えない(日本政府によるペナルティーも想像しにくいし、補填もありえない)。

→以上から、基本的には黙って「後出しジャンケン」に徹する。最初に余計な行動を取らない。周辺企業が一斉に駐在員を引き上げるような状況になれば、自社も突出しないように対応する。

基本線は以上ですが、一つだけ留意点があります。

それは、積極的に日本人引き上げを行わず、周囲の様子を見ている段階で、不幸にして目立つ形で社内感染が発覚し、メディア沙汰になってしまった場合です。日本の世論で炎上すると、短期的にはダメージが避けられませんよね。

このリスク回避を最優先するのであれば、全員ではなくても駐在員を入れ替わりで帰国/現場復帰させるということも考えられます(両側で隔離していると仕事にはなりませんが…)。形だけ整えても日本向けに「対応はしている」と示せます。

日本には、企業向けにメディア対策や危機管理を指南する専門家も存在しますので、そういうところに相談しながら、日本側リスクを負担可能な程度に抑えておくのがよいかもしれません。

なお、浙江省周辺の事態は上記とは別に注視が必要だと思います。
暖かくなっていきますし、さらに他地域で深刻化するような事態なく終息することを願いつつ。

ご不明点などあれば、お寄せください。
引き続き、Letterでの情報共有を続けます。

小島、Crew一同